「アズミ・ハルコは行方不明」
私も昔は中年になっても若者文化を解している人をかっこいいと思ったけれど30過ぎると考え方も保守的になった結婚して子供もいるのに何言ってんだこのおっさんと呆れてしまう、という歌詞の破壊力。
— Hiroaki Yutani (@yutannihilation) 2016年9月24日
とつぶやいたあとで、これは山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」の一文だと知った。Moe and ghosts × 空間現代のアルバム「RAP PHENOMENON」の6曲目。
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山内マリコの日本語はなんか心の声が漏れ出ているみたいな感じで、息継ぎのタイミングがよくわからなくて、それはMoe and ghostsの訥々としたラップになぜかよく合う。もうすぐ30過ぎるおっさんとしては、震え上がりながら感心するしかない。ぶるぶる。
というのが今年の秋で、こないだ朝テレビを観てたら蒼井優が30代手前にあるという「第二思春期」の話をしていて、ああなんか面白そう、と思って、これも山内マリコが原作の「アズミ・ハルコは行方不明」を観てきた。映画の方。
面白かったけど時系列がズタズタに切り刻まれていてさすがに頭がついていかなくて、原作も読んだ。負けた感あるけど。
話は変わって、蒼井優はインタビューで、
『寂しい』も『退屈』も、中身はそんなに変わらないのに、『寂しい』だとどうしても内にこもっちゃう。でも、『退屈』だったら自然と、『じゃあ何をしようかな』って前向きな発想に切り換えることができるじゃないですか。(30代になった蒼井優が「年齢を重ねるのが楽しみで仕方ない」と語る理由――「20代後半は“第2思春期”。仕事に恋に、こじらせている自分を楽しんで」 - Woman type[ウーマンタイプ]|女の転職@type)
と言っていて、そういえば「ここは退屈迎えに来て」に描かれていたのは徹頭徹尾「退屈」の話だったような記憶がうっすらある(読んだのは数年前なので、どんな話だったかはもうほとんど覚えてない)。あの本で一番印象的だったのは、地方都市ではパートナーが見つからなくて退屈、という同性愛のひとの話だ。
あの退屈は、どうだったんだろう。
「寂しさ」より「退屈」がいい、と言い切ることは簡単ではない。若いうちの「退屈」は時に死ぬほどつらく感じる。映画の「アズミ・ハルコは行方不明」は、それでも「退屈」、と言い切れる蒼井優のキャラクターに支えられている。「寂しさ」を振り切っていく。
別に名作ではないけど、危ういバランスに成り立つその感じが面白い。俺がなりたい30代というのはたぶんこんな感じなんだろうなあ、とか思ったりして。もっと退屈したい。