ブッシュの子供がオバマの子供に書いた手紙と社会の分断と

ジョージ・ブッシュ

という単語を聞くと、いまでもちょっと反応してしまう程度にはあんまり好きじゃない。ちょうど高校の頃にイラク戦争が起こった世代としては、刺激が強すぎる名前だ。

で、そんなブッシュの子供が、オバマの子供に手紙を書いたというニュースがこれ。

time.com

どうせいい話に仕立て上げようとしてるんでしょ、という気持ちで読んでたけど、英語力が足りなくてところどころ読み飛ばしたけど、なんかふつうにいい話で、このあたりで不覚にもうるっときてしまった。

Enjoy college. As most of the world knows, we did. And you won’t have the weight of the world on your young shoulders anymore. Explore your passions. Learn who you are. Make mistakes—you are allowed to.

たぶん親が在任中には世界が双肩にのしかかっていたし、失敗することも許されなかったんだろうなあ。重い言葉だ。

You have lived through the unbelievable pressure of the White House. You have listened to harsh criticism of your parents by people who had never even met them.

当時そういうharsh criticismをアジアの片隅で投げつけていたティーンズだった身としては、返す言葉がない。そういう批判が間違っていたとは今でも思わないけど、子どもにとってはつらいよね。

この手紙がなぜ大事だと感じるかというとたぶん、オバマかトランプか、自由か平等か、みたいな極端な二択を出して分断を煽る世の中にあって、これは分断に与することを拒絶しているからだ。たぶん政治的なスタンスには隔たりもあるだろうに、この手紙はそういうことはすっ飛ばして「大統領の子供って大変だったよね」というあるある話だけしか書いていない。

前のブログでも引用したけど、内田樹が編者の「日本の反知性主義」の中で、小田嶋隆がこんなことを書いている。

 最初に知性を軸とした対立があって、その結果として、人々が二つの陣営に分裂しているのではない。順序としては、分断が先にやってきていて、その分断を生み出したものとして、「知性」が悪役に仕立て上げられている。ここのところを間違えてはいけない。 (中略) 思うに、われわれは、知性みたいな些細なことで対立するのはやめて、なるべく早い時期に、きちんとした再分配のある、マトモな社会を取り戻して、この分断の進行を阻止しなければならない。

ほんとうに今こそそう感じていて、敵は分断であって、政治的なスタンスが逆の人間ではない。オバマのことばは感動的だけど、「それに比べてトランプは…」みたいな反応を呼び起こすものであるのなら、ぐっとこらえて一歩離れて見なければいけないと感じている。分断こそが、敵なのだ。

だから、こういうナラティブを大切にしたい。知性みたいな些細なことで対立するのをやめるためになにをすればいいのか、いつも考えている。この手紙にはその答えの片鱗が見えた気がした。